青いチュニックを着た女神。
そのヴィジョンも興味深いけど、やはり私は心理カウンセラー。
主訴であった「眠れない」
「疲れが取れない」
「空虚感がハンパない」
ということが、あの10分で消失したことが衝撃的だった。
だって、本当に辛そうだったんだもの。
でも、よかった。
本当によかった。
あかねさんの笑顔、
(こんな風に笑うんだ!)
嬉しかった。
こんな風に、来たクライアントたちに一回のセッションで体験してもらうには、
私は更に何かを知る必要があるんだろうか。
それとも、今の私で、こういうことが起こって、
しかも、最近、こういうことが続いているんだから
このままでいいのかな。
そんな想いがグルグルしていた。
あかねさんは、数週間後に再びご予約を入れてくれた。
飛び跳ねるような足取りで部屋に入って来たあかねさんは、
「あれから人生がまったく変わってしまいました。
なんていうのかしら?
何も違っていない日常なんですよ。
でも、なんだか愉しいんです。
大変なことも相変わらず。
なんでしょうね。」
「愉しそうです。
前回、お話してくださった眠れない、疲れが取れない、空虚感は、今は、いかがですか?」
「もう、全然です。
夜は爆睡。
何も特別な用事がないのに変ですね。
朝から仕事に行けるのが愉しいなんて。
考えてみれば、自分のできることを求められることの有り難さみたいなことを
忘れていましたね。
大変ですけど、やり甲斐のある仕事でした。」
「それはよかった。
今回は、どういたしましょう。
何かお話したいことや私にできることがありますか?」
「ああ、そうですね。
今の私を見ていただくことと近況のご報告も、大きな目的でしたけど、
前回のリラクセーションをもう一度していただきたくて。」
「はい。では、リラックスしていきましょう。」
ベットに移っていただき、いつものように身体に意識を向けて
呼吸と共に筋肉を緩めていけるよう言葉で誘導しました。
ゆったりした呼吸を感じていたら、あかねさんが目を閉じたまま
「先生、あの、このままお話していいですか?」
「いいですよ、どうしました?」
「目の前に土壁が見えるんです。
これ、なんだろう。
ものすごく巨大な壁。
あ!ピラミッドです。
私、ピラミッドの前にいるんです。
これ、なんでしょう!?
たくさんの人が集まって来ています。
私も、このたくさんの人たちと一緒に中に入って行くようです。」
え??ピラミッド??
女神様の次は、ピラミッド。
「とても広い空間が内部にあって、
その広い空間の真ん中で、誰か女性が話をしています。
みんなに向かって話をしています。
あ!!その真ん中でしゃべっている人は、
先生です!!」
へ??
私?
「顔は違うんですけど、絶対に先生です。
私は、少し離れたところにいるんですけど、わかります。
あ、知っている人たちが、何人かいます。
妹も。顔は違いますけど、妹です。」
そう言って、静かになったので、しばらくそのままでヴィジョンを視てもらうために
「充分、感じてみてください。
充分、視てください。
充分だと思ったら、頷いて、私に教えてください。」
しばらく静けさに包まれた。
静かに頷いたあかねさんを、今に戻ってもらった。
ソファーに戻って、ハーっと息を吐き、
「私は、数学者でした。
いろんな専門家が集まり、何か儀式みたいなことをしていました。
こうやって、時を越えて、また巡り会って、
また導かれました。」
「今、どんな気持ちですか?
何を感じていますか?」
「そうですね。
なんだか、更に、今が、今の自分が愛しい。
今、出逢っている人との時間を大切にしたいです。
妹は、何となく癪に触る存在だったんですけど、
羨ましかったのかもしれません。
ピラミッドでも、先生のすぐ側で何かお手伝いしていて、
神官のひとりだったのでしょうね。
でも、彼女は、そんなことを鼻にかける様子もなく、淡々と微笑みをたたえているような子で
小さい頃から。
私は、成績がよいだけで、何の取り柄も、かわいげもないと思って
妹を妬んでました。
妹は、私のことを尊敬してくれているのに、
いつも、お姉ちゃん、すごいね!って言ってくれてたのは、
慰めじゃなくて、本気でそう思ってくれていたんですね。
あの頃の孤独感を引きずっていたのかもしれません。
あの時代もそうでしたけど、
優秀ですね、なんて、私にとったら褒め言葉に感じられなくて。
ああ、アタマしか、取り得ないからね、なんて拗ねていました。
なんて幼い心。
私は未熟でした。
やっと、いろんな方の想いを、今、少しだけですけど、
わかりはじめたような氣がします。
自分にできることを やっていきます。
そして、プロポーズされていたんですけど、
今日、返事をします。
私、結婚します。」
「あら、そんな方がいらしたのね!
嬉しい!おめでとうございます!」
「こんな私のどこがいいんだか、
と思っていました。
でも、いたんです。
ピラミッドの中に。
自分とは別分野の専門家でした。
私がものすごく尊敬していた方で、たくさん助けてくれた恩人です。
また、助けられてる。
私、わかってなかったなぁ。
恥ずかしい。
でも、彼が言ってくれていたいろんなことが
今、本当の意味?というか、シンプルに届きました。
好きでいてくれたんですね。
先生、またしても、今世でも、ありがとうございます。
私にとって、いつも大切なことを思い出させてくださる方です。
私、この人生、さっぱり愉しんでなかった!
もったいないことしました。
でも、今、生きてる。
生きます。
私、生きます。」
前回より、地に足がついたなぁ。
すごく安定感がある。
地の底から地上を超えて、天に昇り、地上に降りて来たみたい。
「ありがとうございます!」
って、あかねさんから私を抱きしめてくれた。
彼女の中でみなぎるエネルギーに心から祝福した。
彼女が帰ってから、
彼女が体験したことは、前世なのか?
それにしても、こんな短時間で、ものすごい情報量を視るひとだなぁ。
前世か。。。
あかねさんの前世体験を皮切りに?
クライアントたちが、次々に前世体験をしていくことが続いた。
(あの、みなさん、、どこへ??)
と心の中でつぶやくけど、
それぞれが深い氣づきを得て、顔を上げ、キラキラと輝いていくから
(私は、これでいいんだ。)
と、思うものの、彼女たちに何が起きているんだ??
そういえば、解離性人格障害のクライアントに催眠療法を施すために
いろいろ調べているうちに、
神様みたいなメッセージを施術者に伝えたりすることもある、
という文献に触れたりした。
(詳しくは、Kindle版「煩悩菩薩」をご覧下さい)
興味深いことに、超意識につながるような体験をして、統合が起ったこと。
現実逃避に傾くのではなく、現実を客観的に捉えることができ、自分の人生の全体性が見えるようになったことで、出逢った人々、現在の環境へ感謝が湧いてきたこと。
スピリチャルなヴィジョン、体験が、現実逃避ではなく、統合へと向かうきっかけになったという現実。
意識、次元、時間、空間。
私の中で、何かが戻ってくるのを感じた。
そして、ブライアン・ワイス博士の「前世療法」という本を見つけた。
そこには、私のクライアントたちに起こったようなことが繰り広げられている!!
彼女たちに起こっていることを私がもっと理解したい。
と思った。
開業して、1年足らずのこと。
急激に私の何かが変容に向けて、後押しされているような
ものすごいスピードで、しかもなんだかチームで大きな大きなプロジェクトが始まるような
なんだかそんなことをぼんやり思っては、
セラピーの世界でいろんな可能性があることを知りはじめた。