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カウンセリングにおいて、クライアントが来所の要因と認識し説明できるものが「主訴」となります。

「うつ状態が続いていて、なんとかしたい」

「恋愛において、何度も同じパターンを繰り返している。今まさにその時に直面しているが、これを何とか改善したい」

「何が自分に向いているのか知りたい」

「離婚を考えているけれど、踏ん切りがつかない」

「トラウマを乗り越えたい」

「自分の能力をどう使っていけばよいか、途方にくれている」

などなど、様々な認識している問題(テーマ)があります。

多くの方は、それが「問題」だと認識していますが、それが「問題」として現れているけれど、もっと奥に違う領域でテーマがあり、それを顕在化(認識)することにより現実が変化していきます。

表面的なことを対処して何とかなるならば、人生において大きなテーマではないことがほとんどです。

 

Mさんの場合、

「自分も変化しているとは思う。

好きなことはしているし、仕事も変わりなくしっかりがんばっている。

でも、周りはもっともっとどんどん変化していっている。」

という言葉で始まりました。

そんな変わりないというけれど、変化もあった仕事の状況、猛烈に強烈な悪口の中にいて、辛いこと。
仕事ができるという理由だけでその人が許容されていること。
「あんなに言わなくても、」というくらい酷いのにそれがまかり通る現場。
いい子でいたいがために自分も多くを言えずに、その悪いエネルギーに浸食されていっていること。
まるで自分が削られていくみたい。

でも、仕事をやめる訳にはいかない。

仕事だけが我が人生ではなく、彼女は好きなことも極め続けている。
発表の場も幾度も経験している。
好きなことのはずなのに、その時間をとるために人とも会わず、でも、人に会う気力もない。
好きなことさえ、それも辛くなって、「何のためにやっているのか」という気持ちにまでなってしまうと言う。

その好きなことをやめたら、きっと自分という生きる意味を見失ってしまいそうで、やめられない。
やりたいのか、やりたくないのか、答えられない状況なのだと感じた。

仕事もうんざり!
好きなことも、意味も見いだせなくなってきて、どうしたらいいのか。。

でも、仕事はやめられない!
親のためにすべてをかけて尽くしてきたのに、私が助けて欲しい時は受け止めてくれない。
なんなんだよ!
こんなにがんばって来て、何もご褒美もないの?
私の今まではなんだったの?

両親への、そんな気持ちが出てくる。

「変化」というテーマだったけれど、「変化」の前に立ちふさがるものが見えてくる。

「なんだか自分だけ置いてきぼりにされたような気がしていたのね。」

と私が言うと、大粒の涙が溢れる。

自分の変化よりも優先してきてしまったこと。

それによりバランスを欠いてしまって、望む変化になかなか届かない。

それを特定するためにトランスフォーメーションセラピーを行いました。

自分の変化よりも優先してきてしまった両極性をもっている部分は「美しさと醜さ」というテーマ。

彼女は、「醜くなっていはいけない」と自分の半分を否定、抑圧することにより美しい人生への制限をかけてしまっていたのです。

そこそこ美しいけれど、そこには何もないような虚しささえ感じているようです。

「あなたは、自分の醜さを閉じ込めているでしょう。

全部、白くしようとしたら、無になっちゃう。

人生はね、白だけじゃないからいいのよ。黒があれば、白が引き立つ。

更にいろんな色も生まれるの。

白と黒、あるとない、というところからすべて生まれるの。

自分の中の黒を受け容れていくこと。

さっき、いい子でいたいから、とおっしゃったけど、それをずっとやっていると、

あなたの白を引き立てるためにイヤなヤツを人生に配置しなければならない。

恋愛でもそうでしょ。同じです。いい男では、自分は引き立たない。

黒を否定していると、逆に思ってもいないような黒を引き寄せてしまうの。」

思い当たることがたくさんあるようで、表情豊かに反応するMさん。

「ではね、その分離のパターンを見てみますね。

どうして、半分を否定するようにしてしまうのか。バランスを失ってしまう元を見ます。」

すると、出てきたのは「裏切り・信頼」が出てきました。

裏切り・信頼の恐れ、実際にそこにはトラウマもある。

両親との間で起った様々なことが彼女の口から出てきます。
どれだけのエネルギーを注いで、親をフォローしてきたのか、どれだけ自分ががんばって来たのか。
悔しい想いもした、いろんな気持ちが溢れてきます。
自分自身のパターンも見えてきます。
強い人に惹かれて、いいように扱われてしまうのはなぜなのか、ということも。

「私は弱い。何もできない。」

だから全面的に支えて欲しいと思うけど、そんな価値がないと思うから虐げられることを無意識に繰り返してしまっていた。
小さな自分は悲しくて、虚しくて仕方がなかったろうと思う。
まるで何も報われないような虚しさを感じていたのだから。
知らない人たちは「恵まれていいね」なんて無責任に言う。

でも、自分でも思ってしまっていた、言ってしまっていた、自分を虐げるようなことを。。。

 

そこで自分の誤った信念を正常化させるためのワークを行いました。

このセラピーが始まってから、今まで見たことがないほど、涙をいっぱい流していた。

今まではどこか他人事のようだったから、あの涙はすごくいい!と思い、彼女にも伝えた。

どんどんすっきりしていく表情。

自分自身を統合するワークを行い統合を更に進めました。

 

最後にセラピーを振り返り、何を再確認したのか(何が癒されたのか)、これからやるべき行動、向かっていく方向をみていきます。

彼女が再確認したのは「大いなる安心感」「絶対的に愛されている」という感覚。

裏切りや信頼に関する分離パターンを持っていた彼女は、安心感と両親云々を越えて、存在として愛されているという癒しが必要でした。

そして行動は、「自分自身を聖域化しなさい」ということ。

自分を大切な存在として、人に流されないこと。イヤなことをうやむやにしない。断るための説明責任を果たすことにエネルギーを浪費しない。それよりもステキだと感じる人、もの、時間を自分の聖域に満たすことを意識すること。

向かっていく方向は、「真のクリエイティビティを発揮する」「愛を受け取り、結び、その豊かさに表現していき豊かさを体現する」
彼女の才能そのもの、という方向が示されました。

怒りや悲しみ、憤りが、彼女の持つ美しさと統合されて生み出される美を私は愉しみにしています。

「周りにはすごい人ばかり」とおっしゃるMさん。

それは、あなたがすごい人だからです。

 

     *ご本人の承諾を得てご紹介いたしました。

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