夫が車好きで、運転免許のない私も自然と車のことをいろいろ知るようになった。幼少期から酷い車酔いで、車移動が地獄のようだった過去はずっと過去になってしまった。夫の車には、独身時代、まだ恋愛に発展していない時から、助手席に乗る機会がけっこうたくさんあり、当時、彼は飛ばし屋でハラハラしながらも、車酔いしない不思議を感じていた。東京に来て、彼は免許を取って以来、ずっと車がある生活から車なしの生活になった。当たり前のように移動する部屋がなくなってみて、車の楽しさをより一層感じることとなり、不意に無性にドライブしたくなる。なぜかそんな時は、夕方6時を過ぎる頃に「あー、車でどこかへ行きたいな。あなたの運転でドライブしたい。」と呟いている。そんな私の呟きをスルーすることなく、速攻、レンタカーを手配してくれて、夜の8時か、9時には、首都高に滑り込む。夜の摩天楼の中で、私は現在と過去をひとつにしていく。そして、行先の見えない未来に進むパワーを充電する。彼の運転する横顔を見るのも、好きだ。そして、彼は遭遇する名車に反応し、その車の名前など、を突然大きな声で言う。最初は、そのアルファベットと数字は聞いたことのない言語のように聞こえた。走っているその車を見つけて、その車のことを言っているのだと認識できるようになり、ずいぶんいろんな車を覚えた。
前置きが長くなったけれど、「フォードVSフェラーリ」
は、是非とも観たいと思っていて、劇場に行ったのだけれど、見応え充分の作品だった!
車好きな人はもちろん、車をめぐる男たちのドラマはいろんなことを考えさせられた。
成功の裏にある様々なことが、描かれていた。世の中に現れている裏にある葛藤や苦悩。それが世の中に出るまで50年以上の歳月が必要だったこと。登場人物のそれぞれに、それぞれの正義があり、誰を中心として見るかによって、いろんなドラマがある。勝ち負け至上主義、世界のパワーゲームの中で、才能を生かし夢を生きようとする人々と自分の世界を守ろうとする人々。達成できたこと、できなかったこと、それでも、終わりじゃない。続いていく。
果たして、50年経った今は、この世界はどう変わっただろう、なんて考えさせられた。マット・デイモンとクリスチャン・ベイルの演技が光って、たまらなく惹きつけられた。車好きで、この辺の歴史に詳しい人にも、詳しくない人にもおすすめ。熱くなった!!
余談だが、東京に来てスーパーカーに乗る機会があった。フェラーリじゃなくて、ランボルギーニだったのだけど、車というイメージに革命を起こすほどの衝撃を受けた。素晴らしい体験だった。これを人間が作ったんだ!というような。今までに体験したことのない次元の高揚感と安心感に包まれた。気づいたら、ますます車が好きになっていた。もちろんハンドルを握っていたのは、愛する男だからなのかもしれない。