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ざっくり説明すると、記憶が飛んだり、記憶を失ったり、意識を失って倒れたり、知らないうちにどこかへ行っちゃったりするのだそうだ。

 

初回のカウンセリングでは、沙織さんの言葉で、今までの経緯を話してくれた。話し始めたら止まらない。ゆっくりと状況が手に取るように分かりやすくお話するのがとても上手な沙織さん。頭脳明晰、仕事もできるであろうことが容易に想像できた。100%以上でやってしまうことで身体が悲鳴を上げているよう。でも、これは就職してから始まったことではなく、大学時代よりもっと前、高校、中学時代にまで遡る。子供のころから母親に「認めてもらいたい」という気持ちが強い様子が見えてくる。

「お母さんから認めてもらえるんだったら、私なんでもやる」そんな小さなころの沙織さんが私の頭の中に浮かんだ。その小さな時の沙織さんのまま「もっと私を認めて!がんばるから、わたし、がんばるから。」という姿が現在の沙織さんと重なる。

 

どんな時も、最高を目指してきた。どんな時も、完璧を目指してきた。勉強も、部活でも、優秀な結果を残してきた。だけど、その当時からやりきった後に体調を崩し、力が出なくなるような症状が現れていた。その当時は、きっと疲れが出たんだろうというくらいの認識だった。だけど、頑張るのをやめない。

「もっと必要とされたい。頑張っている私を認めて欲しい」。

いつも、いつも、最高と完璧を目指して沙織さんは頑張り続けた。その過程の中で、子供の心と健康に携わりたいと医師を目指し、その職を得るに至った。職についた彼女は、更に頑張った。誰よりも研究熱心、子供たちやその母親たちの信頼も厚く、誰よりも遅くまで働いた。子供たちや母親たちから感謝のお手紙が、どんどん増えていった。彼女は嬉しかった。期待されているからには、最高の結果と完璧な成果を見てもらいたいと、もっと、もっと頑張り続けた。

ある日、彼女の中で限界を超えた。訳がわからないけれど、トイレの中でうずくまっていた。診察中だったはずなのに、どうして、そこにいるのかわからなかった。心配する同僚の顔が見えた。

「どうして?どうして、私はここにいるの?」

沙織さんの心の中が、まるでバラバラになったパズルになったよう。ピースが全部見つからない。必死で自分を集めてみるけれど、自分がひとつになった感じはしなかった。「なんかおかしい。なんだか考えられない。」身体の不調が、自分を取り戻してくれる。そんな感じすらした。「だけど、こんなんじゃ、仕事を続けられない。こんな私じゃ、誰も必要としてくれなくなる。認めてくれなくなる。どうしよう。」そんな激しい焦りがこみ上げてくる。どうしよう。ますます身体がばらばらになっていくような気がして怖くなる。ひとりぼっちで、誰も傍にいないような気がして、ますます怖くなる。孤独感が募る。「怖いよ、怖いよ。私、ひとりぼっち。誰もいない!」そう思うと過呼吸発作が起こるようになった。

「私、誰もしらないところで一人ぼっちで死んでしまったらどうしよう。怖いよ。怖いよ。

私、この仕事を続けていけるのだろうか。期待にこたえられるのだろうか。本当は、私はおおらかで、ほがらかな私で、みんなの中で笑っていたいのに。」

(2016年に電子書籍でリリース 私のペンネーム宮城理紗『煩悩菩薩』より)

******

沙織さんとの出逢いは、私がカウンセラーになってわずか半年足らずの頃。間違いなく、彼女は私を導いてくれた。

この道が、私本来のフィールドだと強烈に教えてくれた。

電子書籍「煩悩菩薩」は、沙織さんの1年間の変化を中心に構成されており、他のクライアントさんも何人か登場する。私の予想に反して、「沙織さんが1番自分に似ていると感じた」と言う声が多かった。彼女の症状、心情、氣づきを読んで、たくさんの氣づき、癒し、カタルシスが起ったという読者の声に、また改めてひとりの癒しが起こすパワーに驚いた。

 

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